幽体離脱
7歳まで 幽体離脱をして 遊んでいた
遊べる場所は決まっていた
おばあちゃんの家の近くの 高い絶壁である
ギリギリのところに立ち 正面を向き
ゆっくりと呼吸して 脳ミソの雑音を感じ
その音は やがて大きくなり耳鳴りとなり
四肢抹消から徐々に痺れてきて
その痺れは全身を包み込み 頭の中まで
大きな音と共に 痺れが回り
躰が軽くなるのを感じる 更に集中を深め
ゆっくりと 離脱していくのだ
正面を見ていた視線は上がり 振り向くと
自分を眺める
どこへでも 飛び回れるが 完璧な自由ではない
ハッキリとした 離脱可能時間は分からないが
制限があるのを感じていた
それを誤ると もう 躰には戻れなかったのかもしれない
離脱中は 他人には見えていないし 声も通らない
いろいろ探検できて面白かったが
時間をいつも気にしていなければならないのが
とても嫌だった
独り遊びでも 時間制限があるのだった
この肉体にこだわらなければ
時間なんて 無くなったのだろう
人間へと・・・
7歳を過ぎると 幽体離脱が出来なくなった
何度も試したが 耳鳴りまでで終わる
集中出来なくなてきたのだ
いろいろな 雑念が入ってきて もう 無理であった
丁度そのころ そこの絶壁に柵が設けられ
環境的にも 出来なくなったのだ
完全に 人間に成り下がったのだった
そして たくさんの 能力を忘れ 失くしてきた
それに加え 現在では 肉体の腐食の進み具合が深刻である
どうにか落ち着き 波動を合わせていかねば と必死である一方
もうこの肉体を 捨てようかとも…
柄でもないが 守りたい人間が居るから まだ…